1. サイナスリフトとは?上の奥歯のインプラントで必要な理由
上顎洞は、鼻の両脇、上顎骨の内側にある空気で満たされた空間です。上の奥歯の歯根は、この上顎洞の底に近いことが多くあります。

歯を失って時間が経つにつれて顎の骨が減ったり、上顎洞が下方へ拡大したりすると、インプラントを支える骨が不足することがあります。
このような場合、上顎洞の底にある薄い膜である上顎洞粘膜を慎重に持ち上げ、必要に応じて骨移植をあわせて行います。
名前から鼻の手術のように感じられるかもしれませんが、目的は上の奥歯のインプラントのための骨のスペースを確保することにあります。
もちろん、上の奥歯にインプラントを埋入するからといって、すべての場合に必要な手術ではありません。
2. サイナスリフトは必ず受けなければなりませんか?CTで確認する基準
サイナスリフトが必要かどうかは、CTで上顎洞の下に残っている骨の高さと厚み、上顎洞の状態を確認したうえで判断します。
パノラマ写真は全体的な構造を把握するのに役立ちますが、骨の厚みまで立体的に確認するのは困難です。
そこで私は、CTをもとに次の点を確認します。
1. 上顎洞の底とインプラントを埋入する部位の間に、骨がどれくらい残っているかを確認します。
2. 上顎洞に炎症が疑われるか、上の奥歯の歯根の先の炎症が上顎洞に近いかを確認します。
3. インプラントを最初に埋入したときにどれくらいしっかり固定されるか、補綴物が受ける噛む力はどうかを考慮します。

活動性の上顎洞炎がある場合は、原因を評価し、必要な治療を先に検討しなければならないことがあります。
ショートインプラントを使えばサイナスリフトを避けられるのではないかとお考えになるかもしれません。
実際に、ショートインプラントが代替策になる場合もあります。しかし、先ほど確認した骨の状態と初期固定、噛む力をあわせて見る必要があります。
私が大切にしている原則は、「骨移植は必要な部位に必要な分だけ」行うということです。
サイナスリフトも同じです。手術ができるかどうかだけを見るよりも、現在の骨の状態で本当に必要かどうかを判断することが先です。
一般的な骨移植の必要性については、インプラントの骨造成(骨移植)のご案内で詳しく取り上げています。
3. サイナスリフトの方法:側方アプローチと歯槽頂アプローチは何が違うのですか?
サイナスリフトは、上顎洞粘膜にアプローチする方向によって、側方アプローチと歯槽頂アプローチに分けられます。
2つの方法はどちらかが無条件に優れているわけではなく、骨がどれくらい残っていて、どの程度のスペースを確保する必要があるかによって選択します。
側方アプローチ — 上顎骨の側面からアプローチ
上顎骨の側面にアクセス用の開口部を作り、上顎洞粘膜を持ち上げる方法です。
残っている骨の高さが大きく不足している場合や、比較的広い範囲の挙上が必要な場合に検討できます。
歯槽頂アプローチ — インプラント埋入方向からアプローチ
インプラントを埋入する部位から上顎洞の底の方向へアプローチする方法です。
比較的小さい範囲の挙上が必要で、インプラントを十分に固定できる場合などに検討します。
| 区分 | 側方アプローチ | 歯槽頂アプローチ |
|---|---|---|
| アプローチ方向 | 上顎骨の側面 | インプラントを埋入する部位 |
| 検討する状況 | 骨が大きく不足している場合や、広い範囲の挙上が必要な場合 | 比較的限られた挙上が必要な場合 |
| 主な判断基準 | 残存骨、上顎洞内部の構造、挙上範囲 | 残存骨、挙上範囲、初期固定の可能性 |

どちらの方法が適しているかは、CTで確認した上顎洞の構造と骨の状態、手術計画全体によって異なります。
4. サイナスリフトとインプラントは同時に行えますか?
残っている骨だけでインプラントを十分にしっかり固定できる場合は、サイナスリフトとインプラント埋入を同時に行うこともあります。
反対に固定が難しい場合は、先にサイナスリフトを行い、骨の治癒状態を確認してからインプラントを埋入する方法を検討します。
ここで、もう一つ重要なことがあります。
インプラントは骨に埋入して終わりではありません。その上に装着する歯がどの位置にあるべきか、反対側の歯とどのように噛み合うかも考える必要があります。
延世建浩歯科では、次のように手術と補綴の計画をあわせて検討します。
1. 口腔外科専門医である私が、骨と上顎洞、手術の難易度を確認します。
2. 歯科補綴科専門医のキム・ゴンミン院長が、最終的な補綴物の位置と噛み合わせをあわせて検討します。
3. 手術計画に沿って2人の院長が画面の前で模擬手術を行い、必要な場合は院内の3Dプリンターでナビゲーションガイドを直接製作します。
手術の位置を決める段階から、最終的に使う歯の姿まであわせて考慮するためです。
5. サイナスリフトの痛みや腫れ、鼻血はどの程度ですか?
サイナスリフトは一般的に局所麻酔をしてから行います。麻酔中でも圧迫感や振動を感じることがあります。
麻酔が切れた後は痛みや腫れ、あざが生じることがあり、鼻の方に少量の血が混じることもあります。
ただし、不快感の程度は手術範囲と個人の回復状態によって異なります。
複数本のインプラント埋入や骨移植、サイナスリフトをあわせて行い手術時間が長くなる場合は、意識下鎮静法を検討することもあります。
すべての患者さんに必要な方法ではなく、全身の健康状態や鎮静の適否などもあわせて評価する必要があります。
詳しい内容は意識下鎮静によるインプラントのご案内でご確認いただけます。
私は、術後に生じうる不快感についても事前にご説明するようにしています。延世建浩歯科では、術後の経過確認の際に腫れや出血、口の開き具合などを確認します。
6. サイナスリフト後の注意事項は何ですか?
サイナスリフトの後は、鼻と口の中の圧力が急に高まらないよう注意することが重要です。
普段は特に問題のない鼻かみやくしゃみも、手術直後には上顎洞に負担をかけることがあるためです。
鼻かみ・くしゃみ・ストロー・飛行機に関する注意事項
| 行動 | 注意事項 |
|---|---|
| 鼻かみ | 鼻を強くかまないようにします。 |
| くしゃみ | 鼻をつままず、口を開けたままくしゃみをします。 |
| ストロー | 口の中に圧力の変化が生じることがあるため、手術初期は避けます。 |
| 飛行機・スキューバダイビング | 気圧の変化が影響することがあるため、術後の制限期間を確認する必要があります。 |
| 強いうがい・唾を吐くこと | 手術部位に圧力や刺激が加わらないよう注意します。 |
喫煙・飲酒・運動・食事に関する注意事項
| 行動 | 注意事項 |
|---|---|
| 喫煙 | 傷の治癒や骨の形成に不利になることがあるため、避けます。 |
| 飲酒 | 出血や腫れ、服薬に影響することがあるため、控えます。 |
| 激しい運動 | 出血や腫れを悪化させることがあるため、初期の回復期は避けます。 |
| 食事 | 柔らかい食べ物を選び、手術部位で強く噛まないようにします。 |
これらの行動を避けるべき期間は、手術方法と回復状態によって異なります。一般的な注意事項よりも、実際の手術後に個別に案内された基準が優先されます。
7. サイナスリフトの副作用は?上顎洞粘膜の穿孔と上顎洞炎
サイナスリフトでは、上顎洞粘膜の穿孔、出血、感染、上顎洞炎などの合併症が起こることがあります。
上顎洞粘膜の穿孔とは、上顎洞の底を覆う薄い膜が損傷して穴があくことをいいます。

膜が損傷したからといって、必ずしも深刻な問題が生じるわけではありません。損傷の大きさと位置に応じて、膜を補強したり手術計画を調整したりすることがあります。
ただし、穿孔の状態によっては感染や上顎洞炎などのリスクを考慮する必要があります。
術後に次のような症状が現れた場合は、単なる回復過程の症状だと見過ごさないことが重要です。
- 痛みや腫れが次第にひどくなる場合
- 発熱や悪臭のある鼻水が現れる場合
- 出血が続く場合
- 口と鼻の間を空気や液体が通るような感覚がある場合
このような症状が現れた場合は、手術を受けた医療機関で速やかに状態の評価を受ける必要があります。
8. サイナスリフトの回復期間はどれくらいかかりますか?
サイナスリフトの回復は、歯ぐきの傷が治っていく過程と、内部で骨が治癒する過程に分けて理解するとよいでしょう。
一般的に、回復過程は次のように分けられます。
1. 初期の傷の回復
痛みや腫れなどの初期の不快感は、時間の経過とともに軽減します。
2. 骨の治癒
移植部位の骨が治癒するには、初期の傷の回復よりも長い時間が必要になることがあります。
3. インプラント埋入および補綴の計画
インプラントを同時に埋入した場合は骨との結合状態を確認し、段階的に進めた場合は上顎洞部位の治癒を確認したうえで埋入時期を決定します。

同じサイナスリフトでも、骨の状態と手術範囲、炎症の有無、全身の健康状態によって回復期間は異なる場合があります。
9. サイナスリフトの費用は何によって決まりますか?
サイナスリフトの費用はすべての場合で同じではありません。手術範囲とアプローチ方法、骨移植の有無などによって異なります。
主な決定要因は次のとおりです。
- サイナスリフトの範囲とアプローチ方法
- 骨移植の有無および必要な材料
- インプラント埋入の範囲
- ナビゲーションガイド製作の有無
- 自己血の採取や自家歯牙の活用の有無
同じ上の奥歯のインプラントでも、骨と上顎洞の状態が異なれば必要な過程が変わることがあります。
健康保険(韓国の国民健康保険)の適用可否も、実際の診療内容と適用基準によって異なります。
そのため、費用を理解する際は、どのような過程が含まれるのか、それぞれなぜ必要なのかをあわせて確認するとよいでしょう。
おわりに
サイナスリフトは上の奥歯のインプラントのための治療方法の一つですが、すべての場合に必要なわけではありません。
私が大切にしているのは、CTで骨と上顎洞の状態をまず確認し、最終的な補綴物の位置や噛む力まで考慮して必要な手術を判断することです。
できる治療よりも、してもよい治療を選び、必要な部位に必要な分だけ治療すること。これが私の守りたい診療の原則です。
監修:口腔外科専門医 パク・ジホ院長
参考資料・出典
- International Team for Implantology (ITI). Bone Augmentation Procedures in Extended Alveolar Ridge Defects. Consensus Statement.
広範囲の顎骨欠損とサイナスリフトを含む骨造成の方法。
https://academy.iti.org/academy/consensus-database/consensus-statement/-/consensus/bone-augmentation-procedures-in-extended-alveolar-ridge-defects/1211 - Clinical Implant Dentistry and Related Research (2022). Complications of sinus floor elevation procedure and management strategies: A systematic review.
サイナスリフトの合併症とその対処法に関するシステマティックレビュー。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35737681/ - International Journal of Oral & Maxillofacial Implants (2023). The Impact of Sinus Floor Elevation Techniques on Sinus Membrane Perforation: A Systematic Review and Network Meta-analysis.
手術方法による上顎洞粘膜の穿孔に関するシステマティックレビュー。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37669518/ - McGill University, Oral and Maxillofacial Surgery. Bone Graft/Sinus Lifts: Post-Operative Instructions.
サイナスリフト後の注意事項。
https://www.mcgill.ca/omfs/patient-info/bone-graftsinus-lifts
サイナスリフト(上顎洞底挙上術)は、上の奥歯にインプラントを埋入する際に骨が不足している場合に検討する手術です。CTで残っている骨の高さと上顎洞の状態を確認し、必要かどうかを判断します。側方アプローチと歯槽頂アプローチの違いから、痛み、副作用、回復期間、術後の注意事項まで、口腔外科専門医の視点から説明します。