1. クラウン治療とは?どのような場合に歯を被せるべきでしょうか?

クラウンは、損傷した歯を全体的に覆って形と噛む機能を回復し、残った歯を保護する補綴治療です。

 

歯を形成した部分の上にクラウンを被せる奥歯の補綴治療の解剖学的構造

 

虫歯が広く進行している場合や、歯の一部が大きく欠けた場合、これまでの治療で歯の壁がかなり薄くなった場合に検討できます。

特に奥歯は、食べ物を噛むときに大きな力を受けます。噛む面の突出した部分が薄くなっていたり、亀裂があったりすると、力を受けたときにさらに割れるおそれがあります。

しかし、虫歯が大きいからといって、必ずクラウンにしなければならないわけではありません。

残っている歯の壁が十分に丈夫で亀裂がなければ、損傷した部分だけを修復するインレーや、必要な部分を覆うアンレー(オーバーレイ)も検討できます。

私はクラウンにするかどうかを最初から決めておくのではなく、まず3つのことを確認します。

  • 残っている歯:健康な歯がどれだけ残っているか
  • 保護範囲:どこまで保護する必要があるか
  • 噛む力:今後どのような噛む力を受けるか

この基準によって、治療範囲が変わります。

 

 

2. インレー・アンレー・クラウンは何が違うのでしょうか?

最も大きな違いは、歯を覆う範囲です。虫歯を取り除いた部分だけを埋めるのか、噛む面まで保護するのか、歯全体を覆うのかによって治療が変わります。

 

インレー・アンレー・クラウンの歯の修復範囲と天然歯の保存の違いの比較

 

区分インレーアンレークラウン
治療範囲歯の内側の損傷部位噛む面と咬頭の一部または全体歯の周囲全体
主な目的損傷した部位の回復弱くなった噛む部分の保護損傷が大きい歯の全体的な保護
歯の切削損傷部位が中心必要な部分が中心歯の周囲を形成
検討する場合健康な歯の壁が十分なとき咬頭の保護が必要で、接着条件が適切なとき歯の損傷が広く、残っている構造が少ないとき

アンレーの利点は、歯を全体的に覆わなくても、割れやすい部分を覆って保護できることです。

クラウンよりも健康な歯を多く残せる場合もあります。

ただし、これには条件があります。

  • 残っている歯の壁が十分で、補綴物を接着できる状態である必要があります。
  • 材料に必要な厚さも確保しなければなりません。
  • 亀裂が深い場合や、虫歯と既存の修復物が歯全体を広く損傷させている場合、歯ぎしりや食いしばりで強い力が繰り返しかかる場合は、アンレーが適さないことがあります。

このような状況で、歯を削る量を減らそうとアンレーだけにこだわると、補綴物や残った歯が再び割れるおそれもあります。

健康な歯を多く残すことも大切ですが、残した歯が噛む力に耐えられなければならないという点もあわせて考える必要があります。

 

 

3. 根管治療後は、必ずクラウンを被せるべきでしょうか?

根管治療をしたからといって、すべての歯にクラウンが必要なわけではありません。残っている歯の構造と破折リスクをあわせて判断する必要があります。

一般的に、神経を取ると歯が弱くなると考えられています。

しかし、神経を取ったこと自体よりも、根管治療が必要になるほど大きな虫歯や亀裂ができ、これまでの治療で歯の構造が多く失われていることのほうが重要な場合があります。

特に奥歯は、治療後に残っている壁が薄いと、噛む力によって割れるリスクが高くなります。

そのため、根管治療をした奥歯では、噛む部分を保護する修復を検討することが多くあります。

 

根管治療後の奥歯に残っている歯の壁と咬頭の構造を示す解剖学的断面

 

ただし、その方法が必ずクラウンでなければならないわけではありません。残っている歯の状態によっては、アンレーのような部分的な修復を検討することもあります。

歯が大きく損傷している場合は、レジンで内側を補強することもあります。必要に応じて使用するポストは補強材料を保持するのに役立ちますが、歯の根そのものを丈夫にする装置ではありません。

延世建浩歯科では、根管治療や再根管治療、亀裂に関連する保存の可能性の判断が必要な場合、歯科保存科専門医のハン・スンウォン院長とともに確認します。

反対に、歯根が縦に割れているなど歯の保存が難しく、抜歯が必要な状況では、口腔外科専門医のパク・ジホ院長とその後の治療方針を検討します。

根管治療について詳しくは、マイクロスコープ根管治療・再根管治療のページでご確認いただけます。

 

 

4. ジルコニアクラウンとセラミック・金のクラウンには、どのような違いがあるのでしょうか?

クラウンの材料は、硬ければよいというわけではありません。歯の位置や色、必要な厚さ、噛む力をあわせて考慮する必要があります。

 

ジルコニア・E-max・PFZ・PFM・金クラウンの材料別の外観と構造の比較

 

材料主な特徴考慮すべき点
ジルコニア高い強度と歯の色の再現が可能種類ごとの透明度、厚さ、咬合
二ケイ酸リチウム(E-maxなど)自然な光透過性と色の再現厚さ、接着条件、噛む力
PFZジルコニアの上に陶材を盛る構造審美的な再現、表面の陶材の破折の可能性
PFM金属の上に陶材を盛る構造歯ぐきの周辺で金属色が透けて見える可能性
金合金延性と加工性のある金属材料金属色、合金の種類、適用部位

例えば、噛む力を多く受ける奥歯では、ジルコニアを検討できます。

しかし、ジルコニアも種類によって強度や透明度が異なり、すべての歯に同じように適しているわけではありません。

二ケイ酸リチウムは、自然な色の再現が必要な場合によい選択肢になり得ますが、材料に必要な厚さと接着条件もあわせて確認する必要があります。

結局のところ、どの材料が一番よいかよりも、今の歯にどのような条件が必要かが先です。

前歯は奥歯よりも、色や形への配慮が重要になる場合があります。私は必要に応じて、プロ用のデジタル一眼レフカメラと偏光フィルターで歯の色を記録し、技工の工程に伝えます。

前歯の治療の違いについては、前歯のクラウン vs ラミネートベニア、自分の歯にはどちらが合うのでしょうか?で別途説明しています。

 

 

5. クラウン治療はどのように進み、歯はどれくらい削るのでしょうか?

クラウン治療は、歯の状態を確認したうえで必要な範囲だけを整え、歯に合った補綴物を製作して装着するという流れで進みます。

一般的な流れは次のとおりです。

1. 歯の状態の確認

虫歯、亀裂、歯ぐきの状態と噛む力を確認します。

2. 歯の形成

損傷した部分を整え、補綴物に必要なスペースと形を作ります。

3. 歯の形の記録

口腔内スキャンや印象材を使って、歯の形を記録します。

4. 補綴物の製作

必要に応じて仮歯を使用し、最終的な補綴物を製作します。

5. 装着と確認

歯にきちんと合っているか、隣の歯との間や噛む高さが適切かを確認します。

 

クラウン治療の流れ:歯の検査、切削、口腔内スキャン、補綴物の製作、最終装着の各段階

 

延世建浩歯科では、3Shape TRIOS 5口腔内スキャナーを使って歯の形を記録します。院内の3Dプリンターやファーネスなど、補綴物の製作に関連する機器も活用しています。

では、歯はどれくらい削る必要があるのでしょうか?

決まった量があるわけではありません。虫歯ですでに損傷している範囲、残っている歯の形、使用する材料によって異なります。

とにかく少なく削ることだけが正解というわけでもありません。補綴物に必要な厚さを確保しながら、健康な歯の不必要な切削を減らす必要があります。

治療中は必要に応じて局所麻酔を使用し、治療期間や回数は歯の状態と製作工程によって異なります。

クラウンを装着した後は、使用した接着材料や麻酔の状態に応じた注意事項を守ることが大切です。麻酔が残っている間は、唇や頬を噛まないよう注意が必要です。

 

 

6. クラウンを被せた歯が痛んだり、においがしたりしたら、再治療が必要でしょうか?

クラウンに痛みやにおいが生じたからといって、すべて作り直す必要があるわけではありません。どのような原因で不具合が生じたのかを確認することが先です。

新しくクラウンを被せた後は、一時的にしみたり、噛むときに違和感があったりすることがあります。

しかし、特定の部分が先に当たる感じがしたり、噛むたびに痛みが繰り返されたりする場合は、クラウンの高さと噛み合わせを確認する必要があります。

古いクラウンの場合は、確認すべき点がもう少し多くなります。

クラウンの境目が浮いていたり接着状態が変化していたりすることもあれば、内側に再び虫歯ができていることもあります。

歯ぐきの炎症や食べ物の詰まり、神経の問題、歯の亀裂も原因になり得ます。

このような場合、私は次の順序で確認します。

1. まず歯ぐきの状態を確認します。

2. 食べ物が詰まっていないかを確認します。

3. 歯と歯の間の接触が適切かを確認します。

4. クラウンの境目に問題がないかを確認します。

5. 必要であれば、レントゲンでクラウンの内側の歯や根の周囲の状態も確認します。

ただし、レントゲンだけですべての問題を確認できるわけではありません。

噛み合わせが原因であれば、咬合調整で不快感を減らせることもあります。反対に、内部の虫歯や神経の問題がある場合は、追加の治療が必要になることがあります。

大切なのは、既存のクラウンを維持できるのか、内側の歯に治療が必要なのか、作り直すならどのような原因を改善すべきなのかを見極めることです。

 

 

7. クラウンの寿命はどれくらいで、長く使うためには何が大切でしょうか?

クラウンをどれくらい長く使えるかは、材料だけでなく、残っている歯の状態や噛む力、ケアの習慣によって異なります。

クラウン自体は問題なさそうに見えても、境目の部分に虫歯ができることがあり、時間が経つにつれて歯ぐきの状態が変わることもあります。

そのため、クラウン治療が終わった後もケアが大切です。

  • 歯みがきやデンタルフロスなどで、クラウンの周りや歯と歯の間を清潔に保ちます。
  • 定期的な歯科検診で、補綴物の境目と歯ぐきの状態を確認することをおすすめします。
  • 歯ぎしりや食いしばりによって、繰り返し力がかかっていないかも確認する必要があります。

私自身も歯ぎしりがひどく、歯が大きくすり減った経験があるため、補綴物を計画する際には、歯が受ける力と噛み合わせに注意を払って確認するようにしています。

歯ぎしりや食いしばりが繰り返されると、クラウンや周囲の歯に負担がかかることがあります。

この点については、歯ぎしり治療のページで詳しく説明しています。

 

 

8. クラウン治療の費用は、どのような要因によって変わるのでしょうか?

クラウン治療の費用は、材料の種類だけでなく、歯の損傷の程度や追加の処置、補綴物の製作工程などによって異なる場合があります。

同じジルコニアクラウンでも、歯の状態によって必要な治療は異なることがあります。

費用に影響し得る要素は次のとおりです。

  • 材料:使用するクラウン材料の種類
  • 既存の治療の状態:既存のクラウンを除去する必要があるかどうか
  • 歯の内部の状態:虫歯や神経の問題があるかどうか
  • 追加の処置:残っている歯を補強する必要があるかどうか
  • 製作工程:補綴物を製作し、調整する工程

そのため、クラウン治療を理解する際には、材料の名前だけを見るのではなく、どのような状態の歯に、どのような治療の流れが必要なのかをあわせて確認することが大切です。

 

 

おわりに

クラウン、インレー、アンレーは、互いに競い合う治療ではありません。損傷した歯を回復し、保護するために、状況に合わせて選ぶ方法です。

私はどこまで覆うべきかを決める前に、まず健康な歯をどれだけ残せるかを考えます。

そして、残した歯がこれからも噛む力に耐えられるかどうかもあわせて確認します。

多くを施す治療より、歯を大切に使う治療。

これが、私がクラウンとインレー、アンレーを計画するときに大切にしている基準です。

監修:歯科補綴科専門医 キム・ゴンミン院長

 

参考資料・出典

  1. 米国歯科医師会(ADA)MouthHealthy. Crowns.
    クラウンの定義と治療の目的。
    https://www.mouthhealthy.org/all-topics-a-z/crowns/
  2. 米国歯科医師会(ADA). Materials for Indirect Restorations.
    インレー・アンレー・クラウンの材料別の特性。
    https://www.ada.org/resources/ada-library/oral-health-topics/materials-for-indirect-restorations
  3. 欧州歯内療法学会(ESE), International Endodontic Journal (2021). The restoration of root filled teeth.
    根管治療後の歯の修復基準。
    https://doi.org/10.1111/iej.13607
  4. Journal of Esthetic and Restorative Dentistry (2024). Do onlays and crowns offer similar outcomes to posterior teeth with mesial-occlusal-distal preparations? A systematic review.
    奥歯におけるアンレーとクラウンの臨床結果の比較。
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37497796/