歯科に行かなければならないとわかっていても、考えるだけで怖くなり、ずっと先延ばしにしてしまう方がいらっしゃいます。
こんにちは。蚕室セネの延世建浩歯科、口腔顎顔面外科専門医のパク・ジホです。
歯科恐怖症を克服するために本当に必要なのは、ひたすら我慢する勇気ではありません。何が怖いのかを把握し、それに合った方法で治療の負担を減らすことが先です。意識下鎮静法も数ある選択肢の一つにすぎず、すべての方に必要な方法ではありません。
1. 歯科恐怖症はなぜ起こり、歯科はなぜこれほど怖いのでしょうか?
歯科恐怖症は、単に痛みが怖いというだけで起こるものではありません。治療中に自分で状況をコントロールできないという感覚も、重要な原因です。
歯科を怖がる理由は、大きく分けて四つあります。
- 過去の経験:痛かった治療の記憶や、過去の歯科でのつらい体験(トラウマ)
- 感覚への刺激:器具の音、独特のにおい、口の中の異物感
- コントロールの喪失:横になった状態で次に何をされるのかわかりにくい不安
- 身体の反応:嘔吐反射、強い緊張、パニック症状
特に過去につらい治療を経験した方は、歯科の診療台に座るだけで体がこわばることがあります。
パニック障害のある方は、診療中に不安の症状が出るのではないかと心配されることもあります。このような場合は、症状や治療歴を事前に伝えておくことが大切です。
2. 歯科恐怖症を克服するには、歯科で何をお願いすればよいでしょうか?
歯科恐怖症克服の第一歩は、怖さを隠さず、治療の過程で自分が耐えられる範囲を医療スタッフと相談することです。
一般的に活用できる方法は、大きく分けて三つあります。
1. 治療前に説明をお願いする
どの器具を使い、何をするのかを事前に聞いておく
2. 中断の合図を決める
手を挙げたら少し止めてもらうなどの方法を、事前に取り決めておく
3. 治療を分けて進める
可能であれば、短く簡単な診療から段階的に始める
強い恐怖が続く場合は、認知行動療法のような心理的アプローチも役立つことがあります。
大切なのは、初回の受診ですべての治療を終えなければならないと考えないことです。検査と相談で現在の状態を確認するところから始めることもできます。

3. 嘔吐反射が強く、えずいてしまうと歯科治療は受けられないのでしょうか?
嘔吐反射が強いからといって、歯科治療ができないわけではありません。ただし、反応が出る位置や程度に応じて、治療方法を調整する必要がある場合があります。
嘔吐反射は、のどの奥に異物が入るのを防ぐ自然な防御反応です。
歯科では、器具が舌の奥や上あごの奥に触れたときに、えずきが起こることがあります。緊張が強いと、器具が触れる前から反応することもあります。
このような場合は、器具の使い方を調整したり、段階的に慣れていく訓練などの行動的な方法を検討したりできます。ただし、どの方法が効果的かは人によって異なります。
嘔吐反射のために検診や治療そのものが難しい方は、意識下鎮静法を検討することもあります。

4. 麻酔の注射が怖いのですが、注射の不快感を減らす方法はありますか?
麻酔の注射そのものが怖い方は、注射前の表面麻酔や、注入の仕方の調整などで不快感を減らす方法を検討できます。
麻酔の注射で感じる不快感は、針が入る瞬間だけでなく、麻酔液が組織に注入されるときにも生じることがあります。
当院には、注射時の不快感を減らすための麻酔機器が備えられています。ただし、機器を使ったからといって、すべての感覚がなくなるわけではありません。
注射への恐怖が強い方や、以前に麻酔が効きにくかった経験がある方は、事前にお伝えいただくのがよいでしょう。麻酔の方法は、治療部位や個人の状態によって異なる場合があります。
5. 歯科恐怖症が強い場合、意識下鎮静法は必ず必要でしょうか?
いいえ。歯科恐怖症があるからといって、すべての方に意識下鎮静法が必要なわけではありません。短く簡単な治療は、局所麻酔だけで十分な場合も多くあります。
私が診療で大切にしているのは、恐怖の程度と実際の治療範囲をあわせて見ることです。
| 意識下鎮静法が役立つ可能性がある場合 | 局所麻酔を中心に対応できる場合 |
|---|---|
| 強い恐怖のため、必要な治療を長く先延ばしにしてきた場合 | 不安はあるものの、治療に協力できる場合 |
| 嘔吐反射が強く、器具の使用が難しい場合 | 嘔吐反射が軽く、コントロールできる場合 |
| 複数本のインプラント埋入や骨造成などの長時間の治療 | スケーリングや比較的簡単な虫歯治療 |
| 緊張すると血圧が大きく上がる場合 | 不安と全身の状態が適切に管理されている場合 |
上記は一般的な判断の例であり、実際に適用するかどうかは診察と問診によって決定します。
意識下鎮静法は、緊張を大きく和らげながらも、呼びかけに反応できる状態を保つ方法です。すべての患者さんに適しているわけではなく、事前の評価が必要です。
特に、精神科の薬や精神安定剤などを長く服用している場合は、薬への反応が変わることがあるため、服薬歴や過去の鎮静の経験を確認する必要があります。
詳しくは、意識下鎮静法のご案内でご確認いただけます。
6. 歯科が怖くて治療を先延ばしにし続けると、どのような問題が起こるのでしょうか?
歯科恐怖症で治療を長く先延ばしにすると、最初より治療範囲が大きくなることがあります。特に、歯が抜けた部分を放置すると、歯ぐきの骨(歯槽骨)が減ってしまうことがあります。
診療室では、痛みのためではなく、歯科が怖くて奥歯の抜けた部分を何年もそのままにしてきた方にお会いすることがあります。
私はこれを、木と土地にたとえています。
歯が木だとすれば、歯ぐきの骨はその木を支える土地です。木がなくなった場所は、時間がたつにつれて土地の形も変わっていくことがあります。
歯を失った部分の歯ぐきの骨が減ると、最初であれば比較的シンプルだったはずのインプラント治療に、骨造成が追加で必要になる場合もあります。
もちろん、すべての方に骨造成が必要なわけではありません。現在残っている骨の状態を確認してはじめて判断できます。詳しくは、インプラント骨造成のページで説明しています。

おわりに
私は、「できる治療よりも、してよい治療」のほうが大切だと考えています。
意識下鎮静法をすべての治療に用いるのは正しくありません。その目的は、恐怖に押しつぶされて必要な治療の第一歩さえ踏み出せずにいた方が、ご自身に合った方法で診療を始められるようお手伝いすることにあります。
歯科が怖いなら、何が怖いのかをまず知っておくだけでも、次の一歩が少し楽になるかもしれません。
蚕室セネの延世建浩歯科、口腔顎顔面外科専門医のパク・ジホでした。